受け継がれる血

私の祖父は人の顔をほとんど憶えられなかった。
しかし、一方で人間心理学に長けており
観察眼も並外れていた。

相手が初対面であっても
顔つきや身なりからおおよその性格を推定し
細かい仕草から思考を見抜き
常に相手の先を行く、無敵の営業マンだったらしい。

その祖父の兄もまた、人の顔を全く憶えられなかった。
会社の同じ部署の人間の顔すら記憶が危うかったというが
異常なまでな計算力(暗算力)を誇り
それを武器に地元の大企業の幹部にまで上り詰めた。

私の父も人の顔をほとんど記憶できないという。
それでもやっぱり、どうやら会社にとっては不可欠な存在で
地元ではちょっとした有名人らしい。

そして、私。
もちろん、人の顔の記憶がニガテである。

私の家にはご先祖様からの家系図が残されており
それを辿っていくと地方の豪族に行き当たる。
ひょっとすると彼ら先祖もまた、
そうして財を成したのではないかと、ふと妄想してみる。

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