人間には五感があって、それぞれの感度は人によって異なる。
そのバラつきから認識の差異が生まれ、
それがそのまま個性に繋がってくるようだ。
私の五感が聴覚に偏っていることに気がついたのは、
例の聴覚過敏が発覚する少し前のこと。
私は、ビジネスマナーを学ぶべく、とある講習に参加していた時の話である。
そこでは、見た目の第一印象がいかに重要であるか
ということを検証するために実験が行われた。
具体的には「講師の言葉をよく聞いて言う通りしてください」
との指示があった上で
仕草と言葉を矛盾させる実験である。
(例:「アゴを触ってください」と言って頬を触る)
すると、大抵の人間は視覚を優先するため
講師の仕草を真似してしまうそうで、
実際その会場でも1人を除いて全員が
講師の仕草を真似していたのだが。
ただ1人。
100人近くいた会場で、ただ1人
講師の仕草ではなく、言葉の方を信用した人間がいた。
言うまでも無く、それは私だった。
「稀にこういう方がいらっしゃるんです。
目よりも耳の優位性が高い方!」
講師は私に詰めよって続けた。
「貴方、人の顔覚えるの苦手でしょう!」
図星だった。
「貴方は音に敏感なはずです。何か心当たりないですか?」
その当時は心当たりは無かった。
しかし、その週の末
私は助手と共にライブへ行き
聴覚過敏を自覚するのであった…。